インドで主流なバクティ・ヨーガのメリットと、祈祷に関するインドの言葉のまとめ

インドを訪れたことのある人は、人々の熱心な祈りを一度は見たことがあるでしょう。神々に捧げる供物やお香、花を用いて人々が祈る姿は、美しい所作のひとつとして魅入るものがあります。インド文化には至高の存在と繋がるヒントが秘められています。

神々へ祈りを捧げる礼拝は「プージャ」と呼ばれ、呼称や方式が様々あります。日常のプージャから、人生の節目節目に行われる「サンスカーラ」と呼ばれる儀礼式まで多岐にあります。

プージャの目的と作法についても知っておくことも大切ですが、それ以上に、頭で考えすぎることから解放して、心からプージャに親しみ、心をその焦点に合わせることができたら、私たちの中に眠る可能性がより開花されていくはずです。

実は大多数のインド人にとっての主流なヨーガは、「バクティ・ヨーガ/Bhakti Yoga」で、生活や思想の根底にあると言えるでしょう。

神へ直結するための方法として、例えば、ある人はアーサナという登山口を選んで肉体を鍛錬し、ある人は奉仕によってカルマの浄化をする「カルマ・ヨーガ」という登山口から入山し、最終目標は皆同じ地点へ到着するのが「ヨーガ」の目指すところです。

そこで、現代人にバクティ・ヨーガがお薦めできる理由は、高度な知識をもって推理しても矛盾につきあたり答えを出すのが難しくなってきた現代、言葉や思考という領域でがんじがらめになった思考を解きほぐし、心臓部のエネルギーを増大させます。

「忙」という漢字は「心を亡くす」という文字の成り立ちであるように、忙しい現代人にとって、心を潤してくれるのが「バクティ・ヨーガ」です。忙しい人ほど、インドに来ると魅了されるのは、まるで亡くしていた心が再び自分の体に宿ったような、原始的な生きる力が湧いてくる感覚が感じられるのではないでしょうか。

今日は、いくつかインドの用語を交えて、祈祷についてご紹介します。似たような言葉が沢山あるので、その違いにも触れていきます。

(1)プージャー(पूजा)

 最も広く日常的に使われる言葉で、「礼拝」の意味のほか、語源に「もてなす」という意味もあります。 

 (2)プージャーパート(पूजा पाठ) 


 マントラよる読経を毎日同じ時刻に行う日々の礼拝。家庭で行われる規模から、寺院で複数の祭祀たちにより行われる大規模のものまでをいいます。


Shree Sant Sewa Ashram寺院の朝夕のプージャーパート

(3)ハヴァン/ハワン(हवन) 


  神に捧げるためにしつらえられた火壇の祭火に食物などの供物を投じる儀礼で、プージャの形式のひとつ。護摩。日本で「ハヴァナ/Havana」という読み方で親しまれていますが、ヒンディ語由来の言葉のため語尾は子音字のみ発音するので「ハヴァン/havan」というと現地のインドの人に伝わります。

ガネーシャ、シヴァ、パールヴァティ女神、ヴィシュヌ神、ブラフマー神、以上の5大神を始めに祈ります。


ハヴァンの類義語

・ホーマ(होम)

同じくハヴァンのことを言います。


 ・ヤジュニャ(yajña/यज्ञ) 


 ヴェーダの中で祭祀について集成した「ヤジュルヴェーダ」の中に、最古の記録として確認されているサンスクリット語由来の言葉です。


ヴェーダの宗教の儀礼の中心に位置する「祭式」を(ヤジュニャ)と呼び、執行する者はバラモンに限られていました。


また、動物の生贄が用いられることもあったようです。「ज्ञ」という文字はサンスクリット語では jña/ジュニャ と発音されますが、現代ではヒンディ語の中でも生かされ、この音が gya /ギャ と発音されることも多く、ヤッギャと呼ばれることもあります。

 

(4)アーラティー(आरती)


  灯明(ディーパク)、法螺貝(シャンク)、ガンジス河の水(ガンガージャル)、花(フル)、鐘(ガンティ)、牛乳などを用いて神を称える歌を捧げます。プージャやハヴァンの儀式の一部分を成します。パンディットが引率しながらガンジス河のほとりで行われる賛歌や、家庭内で行う賛歌もアーラティーと呼びます。


アーラティーの類義語

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・バジャン(भजन)
アーラティと異なる点は、灯明やガンジス川の水、花、牛乳などの供物を必要とせず、神を称える賛歌を歌うこと。また、必ずしもパンディットが率いるのでなく、家族単位、同志、ミュージシャンが賛美することもバジャンと呼びます。


 ・キールタン(कीर्तन) 

バジャンとほぼ同じ意味で使われますが、バジャンよりも参加者が多く、寺院のほか、集会場や家の中で行われ、賛歌します。踊りや手拍子をまじえたり、中には飲酒しながら好きに踊り歌う者もいて固い作法はありません。バジャンと同様、パンディットによる儀式的な祈祷はなく、純粋に神を賛歌するものをキールタンと呼びます。

 

(5) プラールトナー(प्रार्थना) 


 「祈る」という意味ですが、厳密には「自分の懇願・依頼を神様に聞いてもらう」という意味があります。ですので、このプラールトナーは本質的に神を称える祈りではないため、プージャやハヴァンに組み入れるとするならば、儀式の最後に、自分の願いを述べることが順番として好ましいとされます。